年輪 

数年前、右肩の予防接種のあとを消してほしいと女性の患者さんが来院されました。

それは「種痘」という天然痘の予防接種のあとで、通常1円玉ぐらいの大きさの古いやけどあとのようになり、見ればそれとすぐわかります。この患者さんの予防接種あともそのようになっていました。

手術の方法は切り取って縫い縮めることになりますが、肩の傷を縫い縮めるとしばしば「ケロイド状」になり結果があまり良くありません。見た目がきれいにならないことが多いのです。

接客業とおぼしき患者さんにこのことをお話しして「手術はあまりお勧めしませんが・・・」と言いましたが、どうしても切ってほしいとのこと。いまの「予防接種あと」より目立つことになりますよ、といってもそれでもいいから切ってほしいと患者さん。

ここまで言われるとよっぽど深い理由があるにちがいないと、手術を引受けました。

その後、気になって種痘の歴史を調べてみますと、天然痘は1976年撲滅、それをうけて種痘も廃止になっていました。つまりおそくとも1976年以降に生まれた方には種痘跡はない、ということになります。今年の時点で種痘跡があればその人は32歳〜33歳より年長ということになります。

あの女性がこれほど種痘跡を消すことにこだわった理由をわかっていただけたでしょうか?

ペース配分 

時々、美術館や何かの展示会に行く機会があります。

そのときは出來るだけ一人で、しかも平日でほかの人が少ないときにいくようにしています。

なぜかというと、自分のペースでまわってみたいからです。兎に角早くまわってまず全体を見てしまい、それからもう一度気に入ったものだけ時間をかけてじっくりみたいのです。見る順番が決めてあって元にもどれないような展示は最悪です。

有名な画家とかの展示があるとなかなかそういうわけにはいきませんが、せめて見る順番ぐらいは好きなようにさせてほしいです。見るのもなかなかエネルギーがいることなので、最初のところでエネルギーを使ってしまうとあとは流すだけになってしまします。

長い手術をするときも、かならすペース配分を考えます。とくに4時間以上の手術のときは、術前にざっと全体の流れをつかんでおいてからその中でクライマックスのところを決めて手術に臨みます。クライマックスのところに70〜80%ぐらいのエネルギーをつかうようにしています。

テレビドラマで手術シーンをよく見ますが、手術開始のときから術者が「ただいまから何とかの手術を行います!」とすごい気合をいれていますが、あれでは肝心なところまで集中力がもたないと思います。いままでの自分の手術で「ただいまから・・・・・」と宣言したことは一度もありません。